夢野久作 ドグラ・マグラ
蔦、葛、朝顏、いづれもいとたかゝらず、さゝやかなる牆に、繁からぬよし。 露臺、朝餉、何殿、何門などは、いみじともきこゆべし。
18第五十段 應長の比、伊勢の國より、女の鬼になりたるをゐてのぼりたりといふ事ありて、その比廿日ばかり、日ごとに、京白川の人、鬼見にとて出でまどふ。
妾を思い出して下されば、妾も……お兄様も、精神病患者でない事がわかるのです……タッタ一言……タッタ一コト……御返事をして下されば……モヨコと……妾の名前を呼んで下されば……ああ……お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様……ああ……妾は、もう声が……眼が……眼が暗くなって……」 私は思わず寝台の上に飛乗った。 静物、動物、人物、風景、何でもござれだ。
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（いきけんこう）• そのほど過ぎぬれば、かたちをはづる心もなく、人にいでまじらはん事を思ひ、夕の陽に子孫を愛してさかゆく末を見んまでの命をあらまし、ひたすら世をむさぼる心のみふかく、もののあはれも知らずなりゆくなんあさましき。 園兒の中には後に東大文学部で イスラエル宗教史を共に聴講の 作曲家諸井三郎君がいた。
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四字熟語と距離を感じることも少なくありません。 しかし杵屋といえば長唄のお師匠さんであろう。
緑内障はその頃の医術では ほどこしようがなかったらしい。 ……こんな不思議なことがあろうか……。 そこで、笑いながら、この「ジャン憲法」の適用によって最後を決するのである。
先生の仆れたときに 財布の中は空気のみ、 借金も貯金も無いあざやかさ。 （あんたくせいろ）• 二人はこうして、ちょっとの 間 （ ま ）、 睨 （ にら ）み合いの姿になった……が……そのうちに若林博士は、私が何の返事もし得ない事を察したかして、 如何 （ いか ）にも失望したらしくソット眼を閉じた。
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つまるところ正木先生と私と二人の共同の事業といったような恰好で……。 人しづまりて後、ながき夜のすさびに、なにとなき具足とりしたゝめ、殘しおかじと思ふ反古などやりすつる中に、亡き人の、手ならひ、繪かきすさびたる見出でたるこそ、たゞその折の心地すれ。 目さめぬれば幾夜もいねず、心をすましてうそぶき歩きなど、尋常ならぬさまなれども、人にいとはれず、萬づゆるされけり。
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九州帝国大学法医学教授 若林鏡太郎 医学部長 この名刺を二三度繰り返して読み直した私は、又も 唖然 （ あぜん ）となった。 酒宴ことさめて、いかゞはせんとまどひけり。
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