子ながらも晴れがましくお思われになる大臣で、ありのままのお姿ではお逢いにならないのである。 源氏の書いた帳のはいる箱には、高い階級に属した人たちの手になった書だけを、帳も巻き物も珍しい 装幀 ( そうてい )を加えて納めることにしていた。
14(葵の上は)白いお召し物に、色の調和も実にあざやかに、お髪のたいそう長くふさふさしているのを引き結んで(着物の横に)添えてあるのも、「こんなふうでこそ(かえって)、愛らしく優美なところも加わって美しいのだったと思われる。
12めでたし・・・立派だ。 どうか(あなた様にお仕えするのを)辞めて去らせてください。 「学問などをいたしまして、ものの理解のできるようになりましたら、その恨みも自然になくなってまいるでしょう」 と言っていた。
10男の兄弟だからって、あまりそばへ寄せてくれませんのですもの、それだのにあなたなどにお見せすることなど、だめですね」 と言う。 「始終あなたをそばに置いて見ることが、私のなくてならぬ慰めだったのだけれど、行ってしまっては寂しくなることでしょう。
14幾人かの腹から生まれた子息は十人ほどあって、大人になって役人になっているのは次々に昇進するばかりであったが、女は女御のほかに一人よりない。 容貌 ( ようぼう )をはじめとして何から言っても同等の 公達 ( きんだち )のあるわけはない、もっと価値の低い婿を持たねばならない気がすると、やや公平でない御愛情から、大臣を恨んでおいでになるのであったが、宮のこのお心持ちを知ったならまして大臣はお恨みすることであろう。 かくな・・・こんな乱暴はするな。
5二日ほどしてまた内大臣は大宮を御訪問した。 葵~まださるべきほどにもあらず~ 【冒頭部】 まださるべきほどにもあらず、みな人も・・・・・・ 【現代語訳】 (葵の上は)まだお産の時期でもないと、(左大臣家の)どなたも気をゆるしていらっしゃる時に、急に産けづかれて、お苦しみになるので、(以前より)いっそう重々しいお祈りのすべてを尽くしておさせになるけれども、例のしつこいおん物の怪ひとつは(葵の上から)どうにも離れない。
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